社会保険と労働保険の被保険者

厚生年金保険の被保険者

【日本年金機構】

被保険者の範囲

厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常時使用される70歳未満の人は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。

「適用事業所」とは、①株式会社や一般社団法人などの法人(従業員数に関係なく全部)、②常時従業員が5人以上個人事業所(飲食業などの法定16業種を除く。)のことをいいます。

「常時使用される」とは、雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係が常用的であることをいいます。試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなります。法人の代表者その他の役員を含みます。

パートタイマー・アルバイト等の場合
パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である人も対象です。また、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、又はその両方の場合で、次の5要件を全て満たす人は、被保険者になります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所又は任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む。)

被保険者とされない人

厚生年金保険の被保険者とされない人は、次表のとおりですが、一定期間を超え雇用される場合は、「常時使用される」ものとみなされ、被保険者となります。

被保険者とされない人被保険者となる場合
日々雇い入れられる人1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。
2か月以内の期間を定めて使用される人所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。
所在地が一定しない事業所に使用される人いかなる場合も被保険者とならない。
季節的業務(4か月以内)に使用される人継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。
臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人継続して6か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。

健康保険の被保険者

【全国健康保険協会】

(健康保険の給付の手続や相談等は、協会の各都道府県支部で行い、健康保険の加入や保険料の納付の手続は、日本年金機構(年金事務所)で行っています。)

被保険者の範囲

厚生年金保険の70歳未満ということ以外は、厚生年金保険と共通です。

被保険者から除外される人

適用事業所に使用されても被保険者になれない人のことを適用除外といい、以下に該当する場合は、船員保険・国民健康保険など他の医療保険に加入することになります。

  1. 船員保険の被保険者
  2. 所在地が一定しない事業所に使用される人
  3. 国民健康保険組合の事業所に使用される人
  4. 健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
  5. 後期高齢者医療の被保険者等

75歳以上になった人

75歳以上になった人は、後期高齢者医療制度に移行します。

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人(※)が加入する独立した医療制度です。75歳になると、加入している健康保険の資格を喪失し、「後期高齢者医療制度」の被保険者となり、個人で保険料を納めることになります。

※64歳から74歳で一定の障害があると認定された方も加入できます。

任意継続被保険者

健康保険は、事業所単位の強制加入を原則としていますが、会社などを退職して被保険者の資格を失ったときは、一定の条件のもとに個人の希望により被保険者として継続することができます。これにより加入した被保険者を任意継続被保険者といいます。

介護保険の被保険者

第1号被保険者

65歳以上の人

第2号被保険者

40歳以上65歳未満の健康保険組合、全国健康保険協会などの医療保険加入者

40歳になると自動的に資格を取得し、65歳になる時に自動的に第1号被保険者に切り替わります。

雇用保険の被保険者

【労働局・公共職業安定所】

被保険者の範囲

適用事業主に雇用されている労働者は、常用・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であり、
  2. 31日以上の雇用見込みがある

場合には、原則として被保険者となります。

被保険者の種類

  1. 一般被保険者
    以下の2から4以外の被保険者をいいます。
  2. 高年齢被保険者
    65歳以上の被保険者であって短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の被保険者をいいます。
  3. 短期雇用特例被保険者
    季節的に雇用される人のうち次のいずれにも該当しない人のことをいいます。
    イ 4か月以内の期間を定めて雇用される人
    ロ 1週間の所定労働時間が30時間未満である人
  4. 日雇労働被保険者
    日々雇用される人又は30日以内の期間を定めて雇用される人をいいます。

被保険者に関する具体例

適用事業所に雇用される労働者は、次の「被保険者とならない人」を除き、本人が希望するか否かにかかわらず被保険者となり、雇用保険料の申告納付が必要です。

区分被保険者となる人被保険者とならない人
学生・生徒昼間学生であっても、次の掲げる人は被保険者となります。

  1. 卒業見込証明書を有する人であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の人
  2. 休学中の人(この場合、その事実を証明する文書が必要となります。)
  3. 事業主の命により(雇用関係を存続したまま)大学院等に在学する人
  4. 一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する人であって、当該事業において、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる人(この場合、その事実を証明する文書が必要となります。)
学生・生徒等で、通信教育を受けている人・大学の夜間学部・高等学校の夜間又は定時制課程の人等以外の人(左記1から4に該当する人は除く。)については、適用事業に雇用されても被保険者となりません。
法人の取締役及び合名会社等の社員、監査役、協同組合等の社団又は団体の役員等法人の役員は原則として被保険者となりませんが、同時に部長・支店長・工場長等会社の従業員としての身分も有している(=兼務役員)場合であって、就労実態や給料支払などの面からみて労働者的性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合に限り、被保険者となります(この場合、就業規則・登記事項証明書・賃金台帳・雇用契約書等の関係書類等の提出が必要となります。)。左記の区分に記載された法人等(以下「法人等」という。)の代表者(会長・代表取締役社長・代表社員等)は被保険者となりません。

また、法人等の役員等(取締役・監査役等)についても、原則として被保険者となりません。

2以上の適用事業主に雇用される人例え在籍出向の場合など、その人の生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける事業所において被保険者となります。従たる賃金を受ける事業所においては被保険者となりません(二重の資格取得はできません。)。
試用期間中の人本採用決定前の試用期間中であっても、雇用関係が存在し、適用要件を満たした就労であれば被保険者となります。
長期欠勤者賃金の支払を受けていなくても、雇用関係が存続する限り被保険者となります。
家事使用人原則として、被保険者になりません。
在日外国人日本国に在住し、合法的に就労する外国人は、国籍(無国籍を含む。)のいかんを問わず被保険者となります。

また、外国人技能実習生として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先に事業主と雇用関係にあるので被保険者となります。

外国公務員及び外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された人は被保険者とないません。

外国人技能実習生のうち、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む。)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者となりません。

事業主と同居の親族次のいすれにも該当する場合に限り、被保険者となる場合があります。

  1. 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
  2. 就業の実態が当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。具体的には、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法・締切・支払の時期などが、就業規則その他これに準ずるものに定められ、その管理が他の労働者と同様になされていること。
  3. 事業主と利益を一にする地位(取締役等)にないこと。

(この場合、登記事項証明書、当該事業所に雇用されている他の労働者の出勤簿などの関係書類等の提出が必要となる場合があります。)

個人事業の事業主(実質的に代表者の個人事業と同様と認められる法人を含む。)と同居している親族は、原則として被保険者となりません。

ただし、左記の1から3のいずれにも該当する場合に限り、被保険者となる場合があります。

国外で就労する人出張や海外支店等への転勤によって国外で働く場合、又は海外の現地法人等へ出向する場合には、国内の出向元との雇用関係が継続している限り被保険者となります。海外で現地採用される人は、被保険者となりません。
船員船舶所有者に雇用されている間は、乗船している船舶が航行する領域にかかわりなく被保険者となります。

船員法に規定する特定の船舶に乗り込んで労務を提供することを内容とする「雇入契約」(乗船契約)の間のみならず、船内で使用されることを内容としない「雇用契約」(予備船員としての契約)が締結されている場合にも、その間において継続して被保険者となります。

船員であって、特定漁船以外の漁船に乗り組むために雇用される人(1年を通じて雇用される場合を除く。)は、被保険者となりません。
公務員国、県、市町村その他これに準ずる事業に雇用される人で、離職時に受ける諸給与が失業等給付の内容を超える人は被保険者となりません。
生命保険会社等の外務員・外交員・営業部員等職務の内容や服務の態様について事業主の指揮監督を受けてその規律の下での労働を提供し、それに基づいて給与が算出されているなど、雇用関係が明確に存在している場合は被保険者となります。雇用関係が明確に存在していない場合は、被保険者となりません。
在宅勤務者

※労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤が免除され、かつ、自己の住所で勤務することを常とする人

事業所勤務と同一の就業規則等の諸規程(その性質上在宅勤務者に適用できない条項を除く。)が適用され、次の5つの要件をすべて満たせば被保険者となります。

  1. 指揮監督系統が明確なこと。
  2. 拘束時間等が明確なこと。
  3. 各日の始業・終業時刻等の勤務時間管理が可能なこと。
  4. 報酬が、勤務した時間又は時間を基礎としていること。
  5. 請負・委任的でないこと。

(この場合、就業規則、賃金規程などの関係書類等の提出が必要となります。)

左記の5つの要件をすべて満たさなければ、被保険者になりません。

労働者災害補償保険の対象となる労働者

【労働局・労働基準監督署】

パート、アルバイトを含めたすべての労働者に適用されます。

一般労働者・・・すべて適用されます。

パートタイマー・アルバイト・・・すべて適用されます(時間・日数・期間を問わず対象なります。)

日雇労働者・・・すべて適用されます。

船員保険被保険者・・・船舶所有者に雇用されている船員たる労働者

派遣労働者・・・派遣元事業場で適用されます。

法人の役員・・・代表権・業務執行権を有する役員は、適用されません。

法人の取締役・理事等の地位にある人であっても、法令・定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる人以外の人で、事実上、業務執行権を有する 取締役・理事等の指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている人は、原則として「労働者」として取扱います。

監査役及び監事は、法令上、使用人を兼ねることを得ないものとされていますが、事実上、一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は、「労働者」として取扱います。

逆に、法令又は定款の規定により、業務執行権を有しないと認められる取締役等であっても、 取締役会規則その他内部規定によって業務執行権を有すると認められる人は、「労働者」と して取扱いません。

同居の親族・・・雇用保険の被保険者と同様です。

海外出張者・・・適用されます。

国内の事業に所属し、当該事業の使用者の指示に従って勤務し、商談・視察・ 業務連絡・技術指導などの用務で海外に赴く人は出張となり、保険の算入対象となります。

海外派遣者・・・適用されません。

海外の事業場に所属し、当該事業の使用者の指揮に従って勤務する者は海外派遣者となり、 国内法の労働者とは認められず、原則的には派遣された国の法制度を適用します。

しかし、特別加入制度を利用すれば、国内で給付を受けられるようになります。